3月のとある日。風が強くて寒い日は、ちょっと出かけるには少し寒すぎました。それでも谷口吉生の名建築と河津桜を見ることができたいい1日。そんな日のスナップ写真。
今回のカメラはLeica M10にSummilux-M f1.4/50mm ASPH. 4thをつけて。
豊田市美術館
愛知県に住んでいながら、豊田市美術館にはまだ1回しか訪れていなかったので重い腰を上げて久しぶりに来館。常設展をぶらぶらみて回る。
気狂いじみたくらいに割り付けを合わせる設計手法は見るものを圧倒させるし、圧倒的に整理された空間は潔さを感じる。ボクが住んでる石川県金沢市にある鈴木大拙館に比べるとスケールアウトした感はあるけどもうすぐ開館して30年が経とうとしていることを考えると仕方ないのかもしれない。バブルが弾けた後、残された泡つぶの一つだったのかもしれないけど、安藤忠雄の一時の圧倒的スケールアウト感満載の各種美術館と比較するとこちらはやっぱり空間の密度が違う気がする。
どんなに美しいモジュールを持った建築物でも一本の木を規則正しく育てることは難しい。ちょっとしたノイズのように立つ樹木もここにあることで愛おしく感じる不思議。設計者はそんなことを期待してここに植栽を植えたんじゃないのかな。
インスタで紹介されているからなのか、写真スポットには必ず若い人が写真を撮ってる。それは一種の嗅覚みたいなもので、若さあふれるセンスで写真スポットをかぎ分ける能力だと思う。ボクはそんな定番写真スポットとは違うポイントを探すのがまた楽しいのだけれど。(定番スポットも撮るよ)
ボクが豊田市美術館の中で最も好きなスペースがこの階段室。ガラスを透過した光が青を孕んで空間を寒色に染め上げていく。誰も座らないであろう椅子が3脚置かれているのもまた良し。毎回ここで写真を撮るけど、それでもまだ満足した一枚は撮れてない。もっと通ったらお気に入りが撮れるのかな。この一枚を選ぶためにここだけで10枚以上撮ってる。
特別展は入らずに常設展だけ楽しむのは、その美術館の特徴を楽しむのに最もいい方法だと思ってる。そして美術品はできるだけキャプションは読まずにサッと見て歩く。気になるものは時々近寄ったり遠ざかったりしながら、作者がどんなことを思いながら作ったのかを想像して楽しむ。それがボクにとっての美術の楽しみ方。ボクは美術史を専攻してたわけでもないし、一般常識以上に勉強するつもりもない。だからボクの理解が正解かどうかなんて関係なくて多分作者もそんなこと思ってないだろう。大切なのは、見た人がそう感じたかだけだと思うから。だからボクの美術館滞在時間は以上に短い。笑
風もない日に鏡面になることを想定されて作られた水盤に波が立ってる日。そうこの日は台風みたいに風が強かった。でも波ができた水盤はキラキラしててとてもきれいだった。波が立ってる水盤はまるで音楽を奏でているように見えてしまう。
ずっと35mmを使ってたボクは、昨年末に50mmのズミルックスを手に入れてから久しぶりに50mmで撮る楽しみを感じてる。75mmも好きなボクはどちらかというと切り取る構図が楽しいのかもしれない。35mmよりも50mm、50mmよりも75mm。それでもボクたちは他と比較することでしかその良さを表現できないのかな。
影絵を楽しむのはスナップの定石。こうやって影が落ちていた時はすかさずピントを合わせてシャッターを押す。リフレクションと透過と不透過。そんな現象が乱立しているこのスポットは今回のボクの新しい発見の一つ。こういう発見があるからスナップはやめられない。ただ、実は手を挙げている人はボクではありません。
この日はFUJIFILMのX100Vも持って出かけたんだけど、FUJIFILMの空の色がやっぱり好きなんだよね。結局現像するじゃん、と言われればそうなんだけど撮ってる時のテンションはやっぱりX100Vは高い。シャッターを押したら撮った写真が見えるEVFはそんなテンションを簡単に上げてくれる。素通しのガラスで撮影してるライカと比べて意識の変化があるのかな。その辺はもう少しボクの意識を掘り下げても面白いのかもしれない。
車の中からでも容赦なくシャッターを切るのは実は最近になってからだと思う。風景写真のように目の前の障害をできるだけ削除して撮影していた初期の頃。汚れたガラス越しに撮影するのなんかありえなかったボク。今は写真の中に映り込むバックミラーや汚れたフロントガラスも、ここでボクが生きていた証の一つとして愛おしく感じる。ボクの思考が醸成されてきたからなのか、単純に歳をとっただけなのか。それ以上考えることはやめよう。
河津桜
豊田市美術館から車で15分ほど走らせたとある川沿いに咲いてる河津桜。寒い日だったけどたくさんの人も来ていたから有名なスポットなのかもしれない。
桜を撮るとしてもいつもこんな感じで切り抜いちゃうから、正直そこまで有名なスポットでなくてもいいのかもしれない。有名スポットだと定番構図がやっぱりあって、それはインスタやTwitterで散々使い古されているから今更撮るのもなんだかなぁって思考になってしまうからな訳で、みんなが気づいてないスポットを見つけるとやっぱりボクも全体がわかるような写真を撮るんだろうな。
ランドセルを背負った子ども達が桜の木の下で上を見上げたようなポーズで写真を撮られてた。お母さん達はミラーレスカメラに望遠レンズをつけてて、カメラ業界全然不況じゃないよ!と改めて実感。無理やりポーズを取らされた写真はSNSで発信する分にはたくさんいいねが付くのかもしれないけど、数十年後に見返したときに本当に愛おしく感じるのか不安になる。もう成人したボクのこども達の写真で大好きなのは、みんなで散歩した時の一枚。それぞれ別のことに興味を示して、付かず離れず歩いているその写真は、当時の彼・彼女をボクが思い出すために最高の一枚だし、ボクは多分そんな写真を撮りたいんだと思う。
河川敷で大きなカメラを構えて声を張り上げながら「きれい」な写真を撮ってるお母さん達を否定はしないけど、順番待ちの子ども達の方がもっと個性が出てて面白いと思うんだよね。オフショットもちゃんと撮っておいた方がいいよ。数十年後に何倍も懐かしく帰ってくるから。そしてそんな写真は大きな一眼カメラで撮ったものじゃなくて、スマホで撮影した自然な写真の方が圧倒的にいいと思うんだよね。今しか撮ることができない、その一瞬をたくさんのカメラを使って記録しておいてほしい。
ボクは若くして子どもができたから、子ども達が小さい時期はまさにガラケーが全盛期。画素数が荒いカメラでパシャパシャ撮ってたのと、データの保存方法も確立されていなくて、今じゃどこに行ったのかもよくわからない。こんなことなら子どもが生まれた時に買ったMINOLTA α Sweetでもっと撮っておけばよかったよ。そんな後悔がボクにあるから、これから結婚や出産を控えてる若い人にはカメラを買うことをおすすめしてるんだよね。多分本人が想像してる以上に、キラキラした時期はあっという間に過ぎていくから。
今年に入ってから身の回りにいろんなことがあって、身体の中に泥が溜まっていくように疲れが残って写欲もどんどん減っていたんだけど、この日はとあるきっかけで外出することができてよかった。
そして冬もそろそろ終わりに近づいてきてるんだね。もうすぐ変化の季節がやってくる。ボクもそれに乗り遅れないように頑張らなくちゃ。
写真は全てLeica M10のRawで撮影しAdobe Lightroomのこちらのプリセットで現像しています。
今回のカメラはLeica M10にSummilux-M f1.4/50mm ASPH. 4thをつけて撮影しました。
ほかの記事はこちら